農業

菌には菌で対抗する!令和4年度にやったさつまいも基腐病に対する施策まとめ

masyu1984

まず断っておきますが、これは僕らGDPSが仮説をたて、検証してることで正解ではないです。

現在さつまいも基腐病は防除困難な病気で産地に大打撃を与えています。

僕たちもさつまいも農家として、できることを全力でやりました、どういう結果になるかは中長期的に見る必要がありますが少しでも誰かの参考になり、また僕らも戦った備忘録として共有させていただきます。

敵を知り己を知れば百戦危うからず

孫子

まずは敵を知る!さつまいも基腐病について

https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002517.html

独立行政法人aliicの記事が具体的で大変参考になります。

基腐病は、Diaporthe destruens(ディアポルテ・デストルエンス)という糸状菌に感染することにより、苗床やほんで発生する。貯蔵中の塊根にも発生する。基腐病菌は、主に、感染した種イモや苗を植え付けることで圃場に持ち込まれる。圃場で生育不良やしおれ、黄変、赤変などした株の地際のあたりが暗褐色~黒色になっていたら基腐病の可能性がある(図1A、B)。本病の病変部にはへいかくまたはぶんせいかくとも呼ばれる微小な黒粒が多数形成され(図1C)、水に濡れるなどすると、そこからおびただしい数の胞子が漏出する(図1D)。これらの胞子は、降雨により生じる停滞水や跳ね上がりなどにより周辺株に広がり、基腐病のまん延を引き起こす。株元以外の茎でも、うねの汚染土壌や周辺株の病変部、水で移動した胞子などに接触すると感染し、発病すると考えられる。

https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002517.html

重要な部分だけ紹介しますが要は、めちゃくちゃ感染力の強い糸状菌病害ということですね。さつまいもにもさまざまな病害がありますが、このさつまいも基病のやっかいなのは

・発見しづらい、発病株が発見しづらいので気づいたときにはもう遅い場合がある
・水で感染する、畝間に水が流れますがそこから周辺株に感染→感染株→水で感染、、あとは指数関数的に媒介。。

の2点だと思います。現在ではアミスターという殺菌剤が基腐病の適応をとれていますので、一応防除方法はありますが確実ではないのが難しいところです。

この病害は世界的に問題になっているようです。驚いたのはアメリカでは1912年に確認され、現在では適切な種芋管理によりかなり抑え込まれているということでした。今まで日本ででていなかったのが不思議ですが、世界が様々な方法でつながっている今あらゆる菌もどこが流入経路なのか、はたまた気候変動によるものなのか原因はわかりませんが、対応していかないといけないのは事実です。

少し脱線しますが、さつまいもに関して(他の作物も?)いえば糸状菌が多くの場合病気に関連しています。

これはなんでなのか僕なりに考察してみました、結論から言うと数が多いからというのが僕の感想です。

だいぶ大まかに放線菌、糸状菌の2大巨頭がいますがどちらにもいい菌、悪い菌は存在します。ただ数が圧倒的に糸状菌が増えやすいようです。

植物にも抵抗性がありますが、数の力で押されて病気に入り込まれてしまいます。

詳しくはヤンマーさんのサイトがわかりやすかったので、紹介します。
https://www.yanmar.com/jp/agri/agri_plus/soil/articles/02.html

やはり、土壌の生態系を適切な状態に近づけることが今できる最善の対策ではないかと思いました。

あくまで、近づけることが人間ができる限界であると思います。完璧な状態は不可能です。そして、最低限の種芋消毒や残渣処理をやった上で何ができるのかを考えていきました。

己を知る

さて、敵はある程度わかりましたので次は己を知るです。
具体的にはそこまで潤沢なヒト・モノ・カネがない状態で僕らがどうやって戦うかを考えました。

1.排水性の改善

https://www.sugano-net.co.jp/products/

排水を良くすることが大切ですので、プラソイラを用いて深耕と耕盤破砕を行いました。プラスでやるとしたら、セスパニアやソルゴーなどの根が長い緑肥を植えるのがいいと思います。

セスパニアについて
https://www.naro.go.jp/laboratory/carc/organic/ryokuhi-sakumotsu/cesbania.html

また、植え終わったあとに明渠排水として圃場周りの水の流れ口を作るのも効果的です。

明渠排水について
https://www.jeinou.com/benri/machine/2019/08/021500.html

2.植え付け前の微生物投入

植え付け前に、米ぬかを散布し培養した微生物を散布しました。

タイトルにもある通り、菌には菌で対抗する戦略をとることにしました。なぜならそれが原理原則に近いと感じたからです。人間の腸内環境も善玉菌、悪玉菌、日和見菌の大きく3種がありそれぞれがちょうどいいバランスの時が良い腸内環境といえます。悪玉菌は0にはならないし、どちらかが増えすぎてもダメです。

このバランスにどう近づけるかが土づくりの難しいところですよね。。そこで僕らは2段階で微生物を投入しました。その一つ目が畝を前の微生物投入です。

また可能な限りコストも下げたいので、米ぬかを活用しています。

米ぬかは微生物の餌として最高です。ただ多く撒きすぎると、爆発的な増加で土の中の窒素を微生物が消費して窒素飢餓に陥ってしまいますので、米ぬかはうっすらと地表が隠れるくらいでOKです。

米ぬかを撒いたあとに、培養した微生物を散布して米ぬかにくっつけしっかりとロータリーしました。本当であればこの後にたっぷり灌水するのがいいですが、露地で灌水設備もないため、翌日に雨が降るのを天気予報で確認して作業を行いました。

正確な天気予報あればこそのテクニックです。

4.堆肥を界王拳100倍にしてくれるあずみん

堆肥は質の確認が難しいのと、継続的に畑に投入、または投入しすぎるのも問題のため以外と難易度が高い資材だと思います。

そこで、僕らが使っているのはデンカさんのアヅミン!!これが堆肥の一番重要な」成分である腐植酸を凝縮した肥料で、去年試験的に使ったら明らかに品質収量ともに上がりました。

https://denka-azumin.jp/?utm_source=denka_hp&utm_medium=link&utm_campaign=nomal

このアヅミンを全圃場に投入しました。堆肥との施用が一層効果的とのことなので、堆肥も 500kg/10a程度投入しています。

5.太陽熱養生処理を活用した土壌消毒で悪玉菌を減らす!

宮崎の強烈な太陽光を利用しないてはありません。マルチを早めに張り、試験区でマルチ内温度を測り積算温度で900度をいくまで太陽熱殺菌を行いました。雑草の種も減り、病害菌も消毒できる方法です。ただ、天気に左右されるので安定した技術とタイミングの確立が今後の課題です。

6.苗の植え付け時に菌力アップを灌水注入して微生物を豊かに!

苗の移植機が使えるようになったことで、植え付け時に灌水注入できるようになりました。手植えの方もいらっしゃると思うのでなしでもいいと思いますが、僕らはこの灌水注入時に微生物をさらに注入しています。

https://www.sunbiotic.com/products/kinryoku-up.html

サンビオテックさんの菌力アップという資材を使っています。菌の種類豊富で費用もそこまで高くなくコスパ最強です。

ということで、現時点で僕らに出来うることをやりました。まだまだやれることはたくさんあると思います。

菌をなくすという考えではなく、有用な菌を増やすことで悪い菌と戦ってもらい抑え込む。その戦略でぼくらはさつまいも基腐病と戦っていきたいと思います。

アミスターがさつまいも基腐病に適用拡大されています

もし発生してしまったら、または予防のためにも農薬の使用も可能です。
https://cp-product.syngenta.co.jp/product/amistar_20sc

to be continued…

ABOUT ME
MASYU
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mac使いの農家3代目さつまいもに全bet
こんにちは。宮崎県新富町でさつまいも農家をしているマシューです。6haの畑でさつまいもを栽培しています。デザイナーとして10年、ベンチャー企業の役員としても働いてきた経験を活かして読んでいただける方に少しでもGOODな情報を届けれるよう、頑張ります。テックニュースが好物。GDPS代表
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